小説家,故開高健の釣りの本『オーパ』の巻頭に
『釣り師は心に傷があるから釣りに行く。
しかし彼はそれを知らないでいる。』という言葉がある。
心に傷があまりない,陽気なおやじ3人が
アラスカは世界中のサーモン釣り師の憧れの川,
『キーナイリバー』へ1週間の釣りの旅に出かけた。
フィッシングガイドのMr.ジョニーのロッジに寝泊まりし,
体は少しポンコツではあるが,心は少年となり
広大な大自然の中をかけずり回った。
ジョニーのロッジのリビングにはプライベートポンドを
見渡せる大きな1枚のガラス窓がある。
その窓は映画のスクリーンの様に,
刻々と表情を変える大自然の風景を取り込んでいた。
塩のブロックを舐めにムースが訪れ,
池の向こう岸には小熊が現れ,
窓の下のエサ場にはリスが飛び跳ねていた。
まさに野生をわし掴みした1週間であった。
帰路アンカレッジまでの車の中では
静かにカーラジオからカントリーウエスタンの曲が流れていた。
3人のおやじは疲れた体をシートにうずめ,
各々旅の思い出を反芻していた。
車窓から夜の流れゆく大自然のシルエットを
ぼんやりと眺めていると,ふと釣りのバイブルと仰がれる
アイザック・ウォルトン『釣魚大全』の中の
釣り師の唄の一節を思い出した。


この世に楽しみ山ほどあれど
勝手気ままな釣り一番
他の遊びは飽みやすし
釣りのみひとりで楽しめて
自由の天地を謳歌する




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