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深まり行く秋を楽しもうと,友人と2人で
会津西街道へ釣り竿を携えてドライブに出かけた。
会津西街道は宇都宮から日光に向かい,
今市から会津若松に至る街道。
奥州街道の裏街道であり,会津藩が参勤交代で
江戸に向かうために整備され,越後以北の人々にとっては
江戸に至る近道で,盛んに利用されたそうだ。
今の時分は至る所に,コスモスや野の花が咲き乱れ,
古き良き日本の原風景を残している街道で,
街道沿いに男鹿川や阿賀野川が流れ,
釣りを楽しむ事が出来るのだ。

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旅は行き当たりばったりの旅に限る。
生来の計画性のなさ,何ヶ月前から計画して
旅行費用を積み立ててなんてのはまったく性に合わない。
思い立ったが吉日。風の吹くまま気の向くまま,ケセラセラ,
突然の出合いが面白いのだ。
切った張ったで,世間の荒波を何とか乗り越えてきたおやじ2人。
楽しい事も辛い事も,善も悪も,清も濁も,酸も甘いも,
全部飲み込んで楽しんでしまう器量はあると思っている。
宇都宮から今市を抜け会津西街道を北上し,
野の花を愛でたり釣りをしたりしながら,
夕刻に途中の湯野上温泉に宿を求めた。



阿賀野川沿いの断崖にそびえる高級旅館に,予約なしで
飛び込んだのだが,よほどおやじ2人風体が怪しいと見えたのか,
木のサンダルをつっかけた背広姿の宿のアンチャンに
「本日は満室でございます。申し訳ありません。」と
慇懃無礼に軽くあしらわれてしまった。
『なにが満室だよ!どう見たってガラガラじゃねーか!まったく!
こうなったら温泉街一うらぶれて安い宿を探そう。』
おやじ2人は立ち直るのが早かった。
鍛え上げたおやじの鋭い嗅覚を働かせ,
肩を怒らせ仇討ちに行くような目付きをしながら
温泉街を右に行ったり左に行ったり,
目指すピッタリの民宿を目ざとく見つけた。




玄関を入ると乳飲み子を抱えた民宿の若奥さんが出て来た。
「予約なしだけど,泊まらせてくれる?」
ロビーの隅を見やると赤ちゃんのガラガラやタオルが,
ソファーに無造作に散らかっている。
友人と顏を見合わせ『いいねー!所帯じみてて。大胆で
開けっぴろげで。高級旅館は飽きた。たまにはこうゆう所も
乙なもんだぜ。気に入った泊まろう!』
通された部屋は山側のマウンテンビュー『まいたけの間』。
民宿で一番の眺めの良い部屋みたいだ。窓を開けると
目と鼻の先をそぞろ歩く湯治客と目がバッチリと合ってしまう。
『俺達オリの中の東京から来た変なおやじ2人だな。』





露天風呂がまた期待を裏切らなかった。
目隠しのまるでない露天風呂で回り360度丸見え。
気の弱い女性なら卒倒してしまうだろう。
湯舟が浅く肩まで浸かれず,不自然な格好で横たわるおやじ2人。
温泉に浸かって首が痛いのは初めてだ。
まるで干上がった池に横たわるカバのようだ。
でもボリューム一杯の食事や民宿のお父ちゃん,お母ちゃん,息子夫婦
の素朴なまでのもてなしは及第点を上げたい。
『よかったなー,高級旅館にとまらなくて‥。』
酸いも甘いも楽しんでしまうおやじ2人。
酒を酌み交わしながら,夜はふけて行くのであった。

『色即是空 空即是色』
お釈迦様は自我を捨てよ,物事にこだわるな。
と諭されている。
おじさん達もお釈迦様の教えに,少しでも近づいたかな。
そんな事ないか?



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